クマ取り施術のリスクと合併症〜医師が教える対策
目の下のクマやたるみは、疲れた印象を与えるだけでなく、実年齢よりも老けて見える原因となります。資生堂の調査によると、クマがあるだけで見た目年齢が4.4歳も上がるというデータもあります。
クマ取り施術は、このような悩みを解消するための効果的な方法ですが、どんな医療行為にもリスクや合併症が伴います。私は美容外科医として多くのクマ取り施術を行ってきましたが、患者様に安心して施術を受けていただくためには、リスクについても正しく理解していただくことが大切だと考えています。
この記事では、クマ取り施術に伴うリスクと合併症、そして医師として私が実践している対策について詳しくご説明します。施術を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
クマ取り施術の種類と特徴
クマ取り施術について説明する前に、まずクマの種類と原因を理解しておくことが重要です。クマには主に「黒クマ」「青クマ」「茶クマ」の3種類があり、それぞれ原因と適した治療法が異なります。
目の下のクマやたるみは、目の周りを囲む眼輪筋の衰えや、上まぶたと下まぶたにある眼窩脂肪の突出によるものが主な原因です。加齢や眼精疲労などにより、目の下にある支えきれなくなった脂肪が押し出され、クマやたるみが形成されるのです。
クマ取り施術には主に以下のような種類があります。
1. 経結膜的脱脂術(切らないクマ治療)
下まぶたの裏側から脂肪を取り出し、ふくらみやたるみを改善する施術です。皮膚を切らないため傷跡が残らず、ダウンタイムも比較的短いのが特徴です。目の下の膨らみが原因で影ができる「黒クマ」に効果的な治療法です。
施術時間は約30分程度で、価格は286,000円(税込)が一般的です。皮膚を切らないため傷跡が残りませんが、腫れや内出血などの副作用が生じる可能性があります。
2. ハムラ法(裏ハムラ・表ハムラ)
ハムラ法とは、ふくらみの原因となる脂肪をくぼみへ移動させ、目の下をフラットな状態に整える治療法です。「脂肪再配置術」とも呼ばれ、くぼみ部分へ固定することで、将来的に脂肪が再度垂れ下がっても再発のリスクが少ないのが特徴です。
裏ハムラ法は経結膜的(まぶたの裏側)からアプローチするため傷跡が残りませんが、表ハムラ法は皮膚側から切開するため、わずかな傷跡が残る可能性があります。どちらも施術時間は約30分程度で、価格は385,000円(税込)が一般的です。
3. 注入療法(オプション)
クマ取りと併用されることが多い治療法として、脂肪注入、PRP注入、ベビーコラーゲン注入などがあります。これらは目の下のくぼみを埋めるために使用され、より自然な仕上がりを目指します。
特に目の下はふくらみとくぼみが同時に存在することが多いため、脂肪を除去するだけではくぼみが目立ちやすくなり、かえってたるみが強調されるリスクがあります。そのため、脱脂と注入を組み合わせることで、より自然な仕上がりを目指すことができます。
クマ取り施術に伴う主なリスクと合併症
どんな医療行為にもリスクは伴います。クマ取り施術も例外ではなく、いくつかのリスクや合併症が報告されています。2024年9月に中国の研究グループが発表した4671人の患者データによると、クマ取り手術における合併症の全体発生率は約11.2%とされています。
主な合併症として、施術結果への不満が6.2%、血腫・腫れ・出血が6.2%、再手術の必要性が2.4%という結果が報告されています。私の臨床経験からも、これらは比較的よく見られる合併症です。
クマ取り施術に伴う主なリスクと合併症について、詳しく見ていきましょう。
1. 腫れと内出血
最も一般的な副作用は、施術後の腫れと内出血です。これらは通常1〜2週間程度で自然に改善しますが、個人差があります。
腫れや内出血は施術の過程で血管を傷つけることで生じます。特に目の周りは血管が豊富な部位であるため、このような症状が出やすいのです。術後2〜3日は泣いた後のようなむくみが生じることもあります。
これらの症状を軽減するためには、施術後のアイシングや、医師から処方される内服薬の服用が効果的です。また、アルコールや激しい運動は血行を促進して症状を悪化させる可能性があるため、しばらく控えることをお勧めします。
2. 目の下の小ジワが目立つリスク
クマ取り手術では、目の下の暗い影を取り除くことで若々しい外見を目指しますが、手術により目の下の小じわが目立ってしまうリスクもあります。特に既にシワやたるみが多い方においては、より顕著になることがあります。
手術で不要な脂肪を除去するプロセスにより、皮膚に余剰が生じ、結果として新たなしわが形成される可能性があるのです。このリスクを軽減するためには、適切な術前診断と、患者様の皮膚の状態に合わせた施術方法の選択が重要です。
3. 下眼瞼外反症(あっかんべー状態)
下眼瞼外反症は、まぶたが外に反っくり返ってしまう状態を指します。クマ取り手術後の合併症として報告されており、発生率は約28.6%と比較的高い数値が示されています。
これは、脂肪を除去することでまぶたが眼球にフィットしなくなり、下からの支えがなくなることで生じます。特に皮膚を過剰に切除した場合や、術後のケアが不適切だった場合に起こりやすくなります。
重度の下眼瞼外反症の場合は、修正手術が必要になることもあります。皮膚を取りすぎた場合は、他の部分(反対のまぶたや耳の裏など)から皮膚を移植する必要が生じることもあるのです。
4. 感染症や炎症のリスク
クマ取り手術にも感染症や炎症のリスクがあります。特に、目の周りの皮膚はデリケートで非常に敏感です。術後のケアが不十分であったり、手術環境が清潔でなかったりすると、感染症や炎症が発生する可能性が高まります。
感染症の症状としては、通常の術後の腫れや痛みよりも強い痛み、発赤、熱感、膿の形成などがあります。感染症が疑われる場合は、すぐに担当医に相談することが重要です。
5. 効果が実感できないリスク
クマ取り手術を受けても、期待していた効果が得られないというリスクもあります。これには主に以下のような原因が考えられます。
- クマの原因が複数あり、選択した手術法が適切でなかった場合
- 患者様の期待と実際の手術効果にギャップがあった場合
- 個人の体質や回復力による差
このリスクを軽減するためには、術前のカウンセリングで医師としっかりとコミュニケーションを取り、現実的な期待値について理解し合うことが重要です。
クマ取り施術のリスクを最小限に抑える対策
クマ取り施術のリスクを最小限に抑えるためには、いくつかの重要な対策があります。私が医師として日々実践している対策をご紹介します。
1. 適切な術前診断と施術法の選択
クマの種類や原因は人によって異なります。黒クマ、青クマ、茶クマなど、それぞれに適した治療法が異なるため、正確な診断が非常に重要です。
例えば、目の下の膨らみによる影が原因の黒クマには経結膜的脱脂術が効果的ですが、血行不良による青クマにはレーザー治療や注入療法が適しています。また、色素沈着による茶クマには美白治療やレーザートーニングが効果的です。
当院では、カウンセリングを全て医師が行い、患者様一人ひとりの状態を詳しく診断した上で、最適な治療法を提案しています。これにより、期待と結果のギャップを最小限に抑え、高い満足度を得ることができます。
2. 高度な技術と経験を持つ医師の選択
クマ取り施術は医師の技術力が非常に重要です。特に下眼瞼外反症などの重大な合併症は、医師の技術不足が原因で起こることが多いとされています。
信頼できる医師を選ぶためには、以下のポイントをチェックしましょう。
- クマ取り施術の実績が豊富であること
- 症例写真が公開されていること
- 合併症や副作用についても誠実に説明してくれること
- 患者の状態に合わせた複数の治療法を提案してくれること
また、眼科の知識を持つ医師が施術を行うことも、リスク軽減につながります。目の周りの解剖学に精通していることで、より安全な施術が可能になるからです。
3. 痛みに配慮した麻酔方法
施術中の痛みを最小限に抑えることも、ストレスを軽減し合併症のリスクを下げるために重要です。当院では、点眼麻酔とブロック麻酔を併用し、痛みに最大限配慮しています。
まず点眼麻酔で表面を麻痺させた後、ブロック注射を行いますが、針は細い32Gを使用して痛みを感じにくくしています。また、麻酔液にもこだわり、キシロカインは強い酸性ですが、中和してから注入することで注入時の痛みを緩和しています。
麻酔の不安が強い患者様には、オプションで笑気麻酔や静脈麻酔も用意しています。このように、患者様の不安や痛みを軽減することで、施術中のストレスを減らし、より良い結果につなげることができます。
4. 術後のアフターケアの徹底
術後のケアも合併症予防に非常に重要です。当院では施術後に医師が正しいケア方法を詳しく説明し、術後の経過についても丁寧に解説しています。
また、帰宅後も公式LINEから24時間相談可能な体制を整えており、術後の不安や疑問にすぐに対応できるようにしています。このようなサポート体制があることで、患者様は安心して施術を受け、術後も適切なケアを続けることができます。
具体的な術後のケアとしては、以下のようなものがあります。
- 施術直後からのアイシング
- 処方された薬の適切な服用
- 激しい運動や飲酒の一時的な制限
- 目をこするなどの刺激を避ける
- 清潔な状態を保つ
これらのケアを徹底することで、腫れや内出血などの症状を最小限に抑え、回復を早めることができます。
クマ取り施術の合併症発生時の対応
万が一、合併症が発生した場合の対応についても知っておくことが重要です。合併症の種類によって対応は異なりますが、基本的な対応方法をご紹介します。
1. 腫れや内出血への対応
腫れや内出血は最も一般的な副作用で、通常は時間の経過とともに自然に改善します。しかし、症状を軽減するためには以下の対応が効果的です。
まず、施術直後からのアイシングが非常に重要です。冷やすことで血管を収縮させ、内出血の拡大を防ぎます。ただし、直接氷を当てるのではなく、清潔なタオルなどで包んで使用しましょう。
また、医師から処方された抗炎症薬や抗生物質は指示通りに服用することが大切です。これらの薬は炎症を抑え、感染症のリスクを軽減する効果があります。
内出血が気になる場合は、ビタミンK配合のクリームが効果的なことがあります。ただし、使用前に医師に相談することをお勧めします。
2. 下眼瞼外反症への対応
下眼瞼外反症は、まぶたが外側に反り返ってしまう状態で、重度の場合は修正手術が必要になることもあります。軽度の場合は、以下のような対応が有効です。
まず、目の周りのマッサージが効果的なことがあります。医師の指導のもと、適切な方法で行うことが重要です。また、人工涙液の使用も症状の緩和に役立つことがあります。
しかし、症状が改善しない場合や悪化する場合は、速やかに医師に相談することが必要です。状況によっては修正手術を検討する必要があります。
3. 感染症への対応
感染症の兆候としては、通常の術後症状を超える強い痛み、発赤、熱感、膿の形成などがあります。これらの症状が見られた場合は、すぐに担当医に連絡することが重要です。
感染症が疑われる場合は、抗生物質の投与が必要になることがあります。また、場合によっては膿を排出する処置が必要になることもあります。
感染症を予防するためには、術後の清潔管理が非常に重要です。医師の指示に従って、清潔な状態を保つようにしましょう。
4. 効果が不十分な場合の対応
施術後に期待していた効果が得られなかった場合は、まず担当医に相談することをお勧めします。効果が不十分な原因を診断し、追加の治療が必要かどうかを判断してもらいましょう。
場合によっては、別の治療法を組み合わせることで効果を高めることができます。例えば、脱脂だけでは効果が不十分だった場合に、脂肪注入やPRP注入などを追加することで、より満足度の高い結果を得られることがあります。
ただし、どんな美容医療も100%の効果を保証するものではなく、個人差があることを理解しておくことも大切です。
クマ取り施術を受ける前に確認すべきこと
クマ取り施術を受ける前に、以下のポイントを確認しておくことで、リスクを最小限に抑え、満足度の高い結果を得ることができます。
1. 自分のクマのタイプを理解する
クマには黒クマ、青クマ、茶クマなど複数のタイプがあり、それぞれに適した治療法が異なります。まずは自分のクマのタイプを理解することが重要です。
黒クマは目の下の脂肪の突出による影が原因で、脱脂手術が効果的です。青クマは血行不良が原因で、レーザー治療や注入療法が適しています。茶クマは色素沈着が原因で、美白治療やレーザートーニングが効果的です。
自分でクマのタイプを判断するのは難しいこともあるため、専門医の診断を受けることをお勧めします。
2. クリニックと医師の選択
クマ取り施術の成功には、クリニックと医師の選択が非常に重要です。以下のポイントをチェックしましょう。
- クマ取り施術の実績が豊富であること
- 症例写真が公開されていること
- 合併症や副作用についても誠実に説明してくれること
- カウンセリングを丁寧に行ってくれること
- アフターケアが充実していること
特に、カウンセリングを医師自身が行うクリニックを選ぶことをお勧めします。美容手術は「医療行為」であるため、最初から医師による適切な診断を受けることが重要です。
3. 施術前の準備と注意点
施術前には、以下のような準備と注意点があります。
- 施術の1週間前からは、アスピリンなどの血液を固まりにくくする薬の服用を控える
- 施術前日からのアルコール摂取を控える
- 施術当日は化粧をせずに来院する
- コンタクトレンズを使用している場合は、メガネを持参する
また、妊娠中、妊娠の可能性のある方や、授乳中の方、特定の疾患がある方などは施術を受けられない場合があります。事前に医師に相談することが重要です。
4. 術後の生活についての理解
術後の生活についても事前に理解しておくことが重要です。以下のような点に注意が必要です。
- 施術後1〜2週間は腫れや内出血が生じる可能性がある
- 目元のメイクは翌日から可能だが、施術部位を刺激しないよう注意が必要
- コンタクトレンズの装着は1週間ほど控える
- 激しい運動や飲酒は1週間程度控える
- 目をこするなどの刺激は避ける
これらの点を事前に理解し、術後の生活に備えておくことで、スムーズな回復につながります。
まとめ:クマ取り施術を安全に受けるために
クマ取り施術は、目の下のクマやたるみを改善し、若々しく健康的な印象を取り戻すための効果的な方法です。しかし、どんな医療行為にもリスクは伴います。
クマ取り施術の主なリスクとしては、腫れや内出血、下眼瞼外反症、感染症、効果が不十分になるリスクなどがあります。これらのリスクを最小限に抑えるためには、適切な術前診断と施術法の選択、高度な技術と経験を持つ医師の選択、術後のアフターケアの徹底が重要です。
また、施術を受ける前には、自分のクマのタイプを理解し、信頼できるクリニックと医師を選び、施術前の準備と術後の生活について理解しておくことが大切です。
私たち東京美専クリニックでは、カウンセリングを全て医師が行い、患者様一人ひとりの状態を詳しく診断した上で、最適な治療法を提案しています。また、術後のアフターケアも充実させ、24時間相談可能な体制を整えています。
クマ取り施術は単なる美容治療ではなく、患者様の自信と生活の質を高める大切な医療行為です。だからこそ、正確な診断と適切な治療、そして誠実な説明が不可欠なのです。
クマ取り施術を検討されている方は、ぜひ信頼できる医師に相談し、自分に最適な治療法を見つけてください。適切な施術とケアにより、若々しく健康的な目元を取り戻すことができるでしょう。
詳しい施術内容や料金については、東京美専クリニック(クマ取り)のウェブサイトをご覧いただくか、カウンセリングにてお気軽にご相談ください。

著者
東京美専クリニック 院長 土田 諒平
東京大学医学部卒業後、大学附属病院にて形成外科・美容外科の臨床経験を積む。
その後、大手美容クリニックにて年間1,000件以上の施術を担当。
顔面のバランス分析や自然な仕上がりに定評があり、「美しさと調和」の美容医療を提案し続けている。
現在は東京・表参道にある東京美専クリニックにて、院長として診療・施術・カウンセリングを担当。
鼻整形、目元整形、輪郭形成、注入治療などを得意とし、幅広い年代の患者様に対応している。
本記事は、美容外科の現場で多くの施術・カウンセリングを行ってきた経験をもとに執筆しています。
インターネット上の不確かな情報ではなく、医学的知見・現場での実績に基づく情報提供を心がけています。
美容医療に不安を抱える方にもわかりやすく、正確な情報を届けられるよう努めています。
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